政治とコピー
我々コピーライターは、日常的に、普通の人とは違うものの見方をします。
特に広告コピーや「文章」については敏感で、頼まれてもないのに「こうした方がいいのにな」と批評してみたり、逆に「この表現はうまい!」とメモしたりします。
FROM:寺本隆裕
この間も、あるコピーを読んでいて「もっとこうした方がいいのに」と思ったことがありました。
それは、今日本中で読まれているコピーで、めちゃくちゃ有名なもの。僕らのようなビジネスマンだけでなく、主婦やリタイヤしたお年寄りまで、成人の多くが読んでいるものです。
それは、、、
民主党のマニフェスト。
マニフェストとは何なのか?とその目的を考えてみると、最終的な目的はその党を売り込むことです。
自分たちはこんなことを実現しようとしています。あるいは、これまでこんなことを実現してきました。「だから清き一票を!」というのがマニフェストの最終的な目的のハズです。報道関係者に情報を伝えたり、政策を知ってもらおうというのも、最終的には党を売り込むという目的につながります。
つまりこれって、僕らの言葉でいう所の「セールスレター」ですよね。
セールスレターは、何かを売り込む目的で作られる文章のことですから、マニフェストはまぎれもない党のためのセールスレターです。でもこの「マニフェスト」を読んでいたら、コピーライティングに関する基本的で重要なポイントを外してしまっていることに気がついたのです。
そしてこれは、日本中のコピーの90%以上が犯している基本的なミスと同じです。それは、、、
「特徴をベネフィットに変換できていない」
というミス。
(特徴とベネフィットについては、先日のWEBセミナーで紹介しました。見逃した人はここをクリック)
多くのコピーは、「この商品はこういうものです」という特徴を説明していて、肝心の「この商品はあなたにこんなメリットをもたらします」というベネフィットに変換できていません。
忘れちゃいけないのが、人は特徴ではなくベネフィットで買うということ。その商品そのものを買うのではなく、「その商品を買うことで起こること、得られるもの」を買うのです。ビニール傘を買う人は、「雨に濡れない」という機能的なベネフィットのために買います。高級なブランド傘を買う人は、「人に自慢したい」「おしゃれだと思われたい」という感情的なベネフィットを満たすために買います。
例えば最近僕が買った「エネループ」という商品。エネループというのは、充電できる電池のこと。ウチでは隆星のおもちゃや、wiiのリモコンなどで電池をたくさん使うので、ちょっと奮発してエネループを買ったのです。
エネループの特徴は、
「この電池は充電して繰り返し使えます」
というもの。
で、一方ベネフィットは、というと、、、
「電池がなくて遊べないというイライラからの解放」
「買いに行かなくていいから、めんどくさくない」
「長期的に見て安い」
「分別して捨てなくていい」
「エコ(ちょっと上級レベルの欲求?)」
などなど。
エネループを買う人は、繰り返し充電して使える、という特徴で買ってるように見えても、実際はそれによって得られるベネフィット「安い」とか「便利」とか「めんどくさくない」というベネフィットが得たくて買ってるわけです。
エネループがベネフィットをアピールしていたかは忘れましたが、多くのコピーが特徴をベネフィットに変換することを怠っています。
「繰り返し充電して使える」と言えば、賢い消費者のことだから「安い」と思ってくれるだろう、、、と、ベネフィットの解釈を読み手にゆだねてしまっているのです。
これはよくある致命的なミス。
見込み客は実際賢いかもしれません。よく考えてくれればベネフィットに気づいてくれるでしょう。でも、よく考えてくれる、ということを期待してはいけないのです。
僕もあなたも見込み客も、毎日毎日、仕事やプライベートなことで頭がいっぱいです。新しいプロジェクトのことや子供の幼稚園のこと。週末の予定や親戚に手紙を書かないといけないことなどで、頭の中はほとんど埋め尽くされているのです。
そしてそのほとんど埋まった状態の見込み客の頭の中にある、0.01%の隙間を狙って、毎日毎日大量のセールスメッセージのシャワーが降ってくるのです。そして、我々コピーライターが作るコピーは、その数百数千のセールスメッセージのうちの1つです。
果たして、そのセールスメッセージ。
あるメッセージは、特徴だけ。見込み客はその特徴を読み、ベネフィットを考える必要がある。
あるメッセージは、特徴をベネフィットに変換してある。見込み客は、その変換されたベネフィットを読むだけ。考える必要はない。
さて、どっちがパワフルでしょうか?
民主党のマニフェストには、何と書いてあったか?
このマニフェスト(セールスレター)ももったいない。終始「政策の特徴」が書かれていて、ベネフィットに変換されているものはあまりありません。例えばわかりやすい例で行くと、
「幹部職員について、実質的な降格人事を可能とするとともに、民間登用を進めます」
いわゆる天下りの政策なのですが、この政策にどのようなベネフィットがあるのか、すぐにわかる人はどれくらいいるのでしょうか?あるいは「感情」が動く人はどれくらいいるのでしょうか?
政治に深い知識のある人にとって、ここからベネフィットを読み取ることができるのかもしれません。でもそうじゃない大多数の有権者にとって、その読み取り作業は不可能ですし、その努力をすることもありません。
マニフェストの目的が「票集め」だとするのなら、書かれている政策(=特徴)を実行することによって、どれくらい自分の生活が良くなるのか(=ベネフィット)を、具体的にイメージさせる(=売る)必要があるのです。
そして、強く感情を揺さぶり、欲求を高め、行動を変えさせる必要があるのです。
ちなみにダン・ケネディは、選挙用のコピーを手がけたことがあります。彼はヒラリーと対立する党の候補者用のコピーをまかされた時、「アンチ、ヒラリーキャンペーン」というキャンペーンを作ったのです。そのキャンペーンでは、ヒラリーの政策の欠点や悪い所を指摘するというもので、「怒り」という人間の持つ最も強い感情をうまく動かして大成功しました。(くわしくはこちら)
あなたのコピーは、ベネフィットの解釈を読み手任せにしていないでしょうか?
単なる文章ではなく、読み手の感情を動かすことはできているでしょうか?
PS
ちなみに、「この政策で日本はこんなに良くなります」よりも「この政策であなたの生活はこんなに良くなります」といったベネフィットの方が、感情に響きます。人間は、遠くの国で起きている戦争のことよりも、自分の髪型のセットが決まらないことの方が重大事件なのです。
そういうわけで例えばB2Bのコピーでは、会社全体のベネフィットだけでなく、そのコピーを読んでいる人への個人的なベネフィットのアピールも効果的です。
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確かに、納得。
私の友人にも政治家がいますが(市議会議員)、民主党よりはベネフィットを前に出しています(たとえば、学童保育の時間を7時まで延長します、共働きの方々が使いやすくします。とか)
どうせなら、政治家のマニフェスト作成を、私たちがコンペ形式で考え、優秀な作品を実際に使ってもらう。そして、気に入っていただければ選挙活動での演説のコピーやなんかも作成する、ってのは可能じゃないかと。
政治家の方々に売り込むコピー作成もしてみたいですね。
政治と言うのは、わざと分かりにくい言葉を使って、国民に分かりにくいようにしているとしか思えないところがありますね。それを小泉さんは分かりやすくしたからあれだけ人気が出たのだと思います。「政治家も人気商売で、選挙に落ちればただの人」ですから、もっと寺本さんにコピーを学ばなければいけませんね。民主党に売り込んだらどうですか?(笑)
寺本様のベネフィットよく理解しました。
なるほどです。
言われてみると、なるほどだと思いました
ただ、マニュフェストに関しては
ベネフィットを言えないんじゃないかなぁと思います
あえてごまかしてるというか・・・
人にベネフィットを伝え行動させるコピーライティング
良識のある人間が正しい方法で使って欲しいものです。
私達が学んでいるコピーライティングというスキルは
人の行動さえも変えてしまう力を持っています。
それは、コピー云々というよりは、
言葉が持つ力というべきなのかもしれませんが
この力により影響力を持たせるのが私達の仕事です。
しかしながら、
この力は、書き手のさじ加減によって、
本来、もつべき力以上の影響力を持つ事があります。
人の感情を揺さぶり、商品を売る事について悪い事だとは思いませんが、
何事もバランスが重要なのでしょう。
なるほど…どうしても、セールスレターを考える場合、プロの領域で考えてしまい勝ちですね。ちょっと思い返してみただけでも2,3思い出します。
売れなかったセールスレター…。
いつも意識していないとつい性能や機能だけをしつこく語ってしまいます。
こんなことは当然わかっているだろうと…
売れなかったセールスレターをもう一度見直してみるチャンスかもしれません。「特徴をベネフィットに変換」できているかどうか?
「特徴をベネフィットに変換」することを顧客に委ねていないか?
いくつか売れるセールスレターに化けるかも!
ありがとうございました。
…小川さん阿部慎之介に…
「菅さん!政策のキャッチコピーは?」と記者に聞かれた総理は、「うーん、、何と言うかこう、、騎兵隊のようなぁ~、力強く前進するようなー、、」
そんな曖昧な事を言っているのをみて、かなりがっかりしましたね。。
また、、こんなもんか、、って。近所だし、奥さんにはお世話になってるから、USP作り方のレポートを作って家に持っていこうと、マジで思いましたね。。
そりゃ、いつまでたっても俺たちのこころに、届かないですよね。
政治家って、誰が決めたか、かっこよくいなきゃいけないから、、
奇麗事ばかり並べてしまう。感情的に訴えて、泣きながら俺たちの
幸せの為に行動してきた人はいるのでしょうか?
もちろん、俺たちだって、、「できもしないようなマニュフェスト」
にしか反応しないのもどうにかしてるけど、そもそもヘッドラインは
「常に約束できるものでなくてはならない。もし、出来ないのなら、、
商品を変えるべきだ!」と、テッドニコラスもそう言ってますしね。。
なんかあるんでしょうね、国民に舐められたくないって気持ちが。。
だから、それがみえみえだから余計に心を開きたくなくなるんですね。
政治家としてはどうか知りませんが、小泉首相が愛されていたのは、
人間らしかったからですよね。どこか人間臭くて、「エックスジャパン」
が好きだとか、また自分の情けない話も良くしていましたね。。
寺本さん、「だから何?俺たちは何が得られるの?」、、ですよね?
いつも、口癖のように言っています。そうやって、批判つーか、、、
確かめてるんですよね。その特徴から得られるベネフィットは何か?って。
そのコピーで、自分の感情が大きく動き、実際に裸足で駆け出して、、
そのコピーで訴えるものを得たいと思い行動するかって事ですね。。
いつも特徴ばかりアピールしていた自分を
思い返して、
「だから売れなかったのか・・!」と
とても腑に落ちています!
そう、考えてみれば今までは相手の解釈に
ゆだねる部分がほとんどでした。
それぞれが各々の現実のフィルターを
通して勝手に解釈するんですから
理解するのも彼らの延長上でしかない
わけですよね。
ベネフィットとバシッと伝える!
これが良い提案だと胸に刻んで
精進します。
街頭演説を聞いていると、確かに何を言いたいのかわからないことが多いですね。
結局、政治家自身もウリがわかっていないのではないかって感じることもあります。
政治家こそUSPをはじめ、コピーの勉強が必要ですね。
大変勉強になりました。
充電式電池と聞くと、すぐに「ラク!」と思いますが、
マニフェストと聞いても何も浮かばないどころか、
「英単語のmanifestoって、何の意味だっけ?」など違う方向へ。
ベネフィットを理解できる・できない度合いの違いを考えると、
いかに読んでいる自分に、全てがかかっているかが明確になります。
自分の業界・商品にどっぷり、顧客無視コピーを展開しがちなのはこれですね。
多くの人に買わせたいのか、分からんちんの顧客は要らないのか、
(民主党は典型的な後者???)
コピーで選別できる事も理解しやすい例にもなりました。
両者を並べられないと、
充電式電池?分かるよ?何がマズいの?と思ってしまいがちです。
いやーーー危ないです!
人は特徴ではなくベネフィットで買う
このこと、ようやく理解できました、
今までは商品の特徴だとか一方的な説明ばかり
お客様にはこんな得することがありますよ
この訴えが全然ありませんでした
これだから、結果が出なかった
おおいに反省しています。
セールスレターを作る大切さ、緻密さ、
学びました。
コピーを勉強し始めてから、政治家の発言が本当に幼稚だなー
と感じることが多くなりました。
と言うのも、みんな相手の党の悪口ばかり。
ライバルに対する有権者の感情を引き出すのではなく、
自分自身に対して怒りの感情を引き出している人ばかりです。
もっと上手い言い方があるのになー、、、なんてよく思います。
私自身が相手の感情を引き出せているかと聞かれると、
まだまだ勉強不足なのですが。
政治家で民衆を動かすのが上手かった小泉元首相は、
ベネフィットを伝えていましたね。